グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

スコット フィッツジェラルド村上春樹の競作

村上春樹は、翻訳家としての仕事がすばらしいと思います。
ただ、小説家としての彼があんなにもてはやされる一方で、翻訳のすばらしさについてはあまり語られることがないように思われます(主に居酒屋で、の話ですが)。

キャッチャーインザライ、ラストグッドバイ、ティファニーで朝食を、など様々な名作の再翻訳を手がけており、どれもすばらしいと思いますが、なかでも印象的な作品が表題のグレート・ギャツビーです。

彼自身がこの作品にたいして相当な思い入れがあり、それが全面に、文章の一つ一つに現れているような作品です。
彼の文章力がなみなみならぬものであることが、私のような素人にもはっきりと伝わってきます。是非、彼の自作小説しか読んだことがない人、彼の小説が肌に合わないと思った人にも読んでもらいたい本です。
私はこの本を読んで、綺麗な文章というものがどういうものかを理解できたような気がしました。

あと、私がこの小説を気に入った理由としてストーリーそのものの味わい深さがあげられます。
グレート・ギャツビーのグレートたるゆえん、ギャツビーの愚直なまでの一途さ、真摯さに、私は多大なシンパシーを寄せました。今でも、ギャツビーの一途さを思い出して、自分の生き方もこれでいいんだ、と思える瞬間があります。
また、読み返したい。そう思わせてくれる数少ない翻訳小説です。

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)