キャッチャー・イン・ザ・ライ
ニューヨークに行くときのポケットに
私は、数あるニューヨークの観光スポットの中で一番セントラルパークが好きです。
といっても、実際にニューヨークに行ったことは一度しかなく、まわった観光名所も限られるのですが。
それでも、数々の映画や小説の舞台となったセントラルパークを訪れることが出来たことは、その後私が映画や小説の鑑賞する際により深く没入するために役立っております。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は、「ライ麦畑で捕まえて」の邦題で有名なサリンジャーの小説を村上春樹が再翻訳したものです。
「ライ麦畑で捕まえて」は、あまりに有名過ぎてかつ本の内容以外の部分で色々なエピソード(暗殺者が暗殺実行前に読んでいた云々)がついていたりするところが鼻について敬遠していたのですが、村上春樹訳がでたことをきっかけに読んでみました。大正解でした。
ストーリー自体より、細部の魅力が光る小説でした。自意識過剰気味の思春期の少年の独白をベースに話は進み、彼の考え方ですとか行動様式の描き方がとてもうまく、太宰の「人間失格」同様、「これは、俺のことだ!」感を強く感じることの出来る話です。
外国の全く違う文化の少年の話なのに、日本の中高生でも共感できるような、世間の評価と自分がこうありたい、こう見られたいと思う理想像とのずれなどを巧みに描いています。
さて、私がこの小説の中で好きな部分は、主人公がニューヨークをさまよう中で、セントラルパークに出てくるシーンです。
「ホームアローン2」や「セレンディピティ」でもセントラルパークが出てきましたが、何かに迷ったり、何かを求める人がセントラルパークを訪れるというモチーフはアメリカ映画で
- 作者: J.D.サリンジャー,村上春樹
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映画好きの人がセントラルパークを訪れればきっと、そこを舞台にした数々の名作が頭の中で再生され始め、ただ歩くだけで贅沢な時間を過ごせることでしょう。
ただ、サリンジャーが本著を発表したのは1951年であり、まだ今のようにセントラルパークを舞台にした映画の蓄積があった訳ではありません。
それでも、セントラルパークにさまよう主人公がたどり着くような構成にしたことは、この公園が昔から迷い人に答えをもたらすような豊かさを持った場所なのだと想像させます。
ちなみに、セントラルパークを訪れたときに私が抱えていた悩みは、公園内をひととおり歩いた後も解決はされていませんでした。