ココ・シャネル

男の嫉妬

私は嫉妬という感情にとても興味があります。
興味がある、と客観的に言えるほど、嫉妬は自分から切り離された感情ではありませんが。
古くから嫉妬が原因で大小様々な事件が起きていることからもわかるように、歴史上の偉人といえども簡単には飼いならすことが出来ません。その、嫉妬というある種みっともなく、しかし鮮烈な感情に強く興味を抱くのです。

あまり日常生活の中で嫉妬の発露を、特に男性の嫉妬を目にすることはありません。
しかし、映画のなかでは嫉妬をむき出しにする男たちを見ることが出来ます。

私が特に印象的だったのは「ココ・シャネル」の中で、シャネルの恋人が見せた嫉妬でした。
彼は、シャネルの焼きもちに対しては「私が一番嫌いなものは、女の嫉妬だ。」と言ってばっさり切り捨てます。

しかし、シャネルに別の男が近づき、シャネルが彼に惹かれているのかもしれないと思い始めると、彼の中で嫉妬の炎が渦巻きだします。
そして、3人で食事をする中で、突然の停電がおき、二人の姿が見えなくなったとたん、嫉妬を押さえきれなくなった男は取り乱して怒りに震えながら二人を捜そうとします。次の瞬間、電気がついて二人が離れた場所にいることに気づき、男は自分が嫉妬に取り付かれていたことに気づき立ちすくむのです。

だいぶ前に1度だけ見た映画であり、細部に誤りがある可能性はありますが、きわめて印象的なシーンでした。
嫉妬が嫌いだ、と言った男が自らが嫉妬にとらわれていることを鮮やかに示したシーンであり、こういう男の嫉妬のみっともなさの描き方は初めて見ました。

嫉妬は倫理や打算からはかけ離れた結論を導き、多くの場合関係する誰の得にもならない結末が待ち受けています。
それがわかっていながら、人は嫉妬から抜けられず嫉妬にとらわれたまま誤った決断をしてしまう。
嫉妬を扱った映画を見るとき、私は嫉妬にとらわれたひとを滑稽に思いつつ、同じように嫉妬にとらわれたときの自分を重ねてしまい、完全に彼らを笑うことはできないのです。

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